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『4日間の修行で学んだこと』

熊本大学 4 年 宮元 昭桂理

 この4日間の修行は私に「人生とは何か」について優しく、時には厳しく教えてくれるも のとなりました。今年の 7 月にイギリスから帰国し就職活動を進めている今、人生につい て見直す良いきっかけとなりました。サポートしてくださった周りの方々にはとても感謝 しています。
さて、私はこの修行中、修行後に振り返って心に留めておきたいと思った教訓がいくつか ありますので紹介させていただきます。
まず、どんなに遠くて実現が難しそうな夢や目標であっても、毎日地道に努力することで 必ずゴールが見え、達成できるということです。この富士山修行は 2 度目の挑戦でしたが、 やはり初めは四日間で歩き終えるということは考え難いものでした。スタート地点の鈴川 海岸から見る富士山は程遠く、どのような試練が待ち構えているのか正直不安でした。しか し、早朝から行動を開始しひたすら歩くことで自分がゴールに近づいていることを少しず つ実感していました。特に今回は、前回とは比べ物にならないほど足の調子がよく、ほとん ど苦痛を感じることはありませんでした。前回の反省を活かし、毎日修行までの間ジョギン グをしていたことも今回の達成に繋がったのだと考えています。精進湖に到着し、満行証を いただいた時の達成感は今でも忘れません。目標を達成するには、何事も日頃の小さな努力 が大切です。地道に積み重ねていくことによってやがて大きな成果を得られるということ を学んだので、毎日心掛けて生活しようと思いました。
次に、高い目標は 1 人で達成することは難しく、仲間との協力により成し遂げることが できるということです。無事に満行できたのは、道を先導してくださる方、熊よけや神仏へ の奉納のために法螺貝を吹いてくださる方、食料や水を調達してくださる方、声掛けをして くださる方などの存在があったからでした。この修行を 1 人で達成することは不可能でし た。命の危険も伴っています。特に今回は 4 日間を通して天候が悪く、山頂では吹雪に見舞 われ生と死の狭間に立たされていました。全身が凍りつき、震え、呼吸もまともにすること ができませんでした。レインコートから跳ね返る自分の吐息の音により命の有り難みを強 く感じていました。苦しい状況にいる中、仲間と共に山の念仏を唱えながら少しずつ登って いきました。仲間の掛け声に元気をもらい、頑張ることができました。私は今まで周囲に協 力を仰ぐことは恥ずかしいことだと捉えており、大変なことも 1 人で抱え込む傾向があり ました。しかし、留学やこの修行を通して周囲の支えと協力の重要性を理解し、今後はどん な挑戦においても周りの力も借りながら協力し合うことも大事だと気付かされました。
最後に、足元にあるものを安易に信用してはならないということです。人生は選択の連続 でできています。それを知らされたのもこの修行でした。色や形、大きさなどどれひとつと して同じものがない石の中から足の置き場とする石を選び出すことは体力の温存を大きく 左右するものでした。頑丈であろうと思われる石であっても、いざ踏んでみるとグラグラし たり、滑りやすくなっていたりするものもあったため常に警戒が必要でした。杖で一つ一つ 注意深く確認しながら慎重に進んで行きました。日常生活においても安易に物事を信じず、 根拠を自分で探した上で決断することが大切です。それぞれの石のように、外見だけで判断 せず、中身を見極めることが重要です。日常での選択は私たちの未来に影響を与えます。修 行から得たこの洞察を胸に、物事を適切に判断し、確実な道を進んでいこうと思います。