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『冨嶽両界峯入修行を終えて』

聖護院門跡末 護国寺 住職 谷 泰智 様

平成30年10月5日から8日にかけて遂行された、龍禅院住職宮元隆誠氏率いる大和修験會による冨嶽両界峯入修行の模様を、昨年に引き続きご報告させていただきます。
本宗末寺が中心となり、宗教界と世間を一貫する視点を以て広く世界中から参加者を募ることで、延いては本宗の隆盛の一助となれることを切に願いながら、今年はダイジェスト版で掲載させていただきます。

大和修験會は宗派の垣根を越えた僧侶や神職や一般人が各々の志を胸に抱きながらあくまでも『行者』として富士山を敬い、同行互いに和合しあって満行を目指す、誠心篤く朗らかな団体です。毎年10月の初めの連休を利用して開かれる3泊4日の修行の行程は、初日の朝に富士市の鈴川海岸(田子の浦)で海水に浸かって体を浄め、装束を整えて富士塚に石を積み道中の安全を祈願することから始まります。

初日の午前中は富士市の中心部にある吉原商店街にて数十件のお店を一軒一軒御祈祷して回り、日吉浅間神社を正式参拝して、いよいよ富士山に向けての本格的な『登拝』が始まります。3時間~4時間かけてアスファルトの道を歩き続け、かつて表富士の正式ルートであった村山古道の入り口にあたる大日堂(村山浅間神社内)まで歩みを進め初日は村山ジャンボに素泊まりします。

2日目は早朝4時~5時に出発し、標高500mの村山ジャンボから標高2500mの新六合目にある宝永山荘まで、獲得高度は2000m、歩く距離は20kmという正に厳しい山修行が始まります。しかし近年になって知名度が急上昇している村山古道は、富士山麓の原生林を抜ける大変美しい風景が魅力であり、初めてそこを通る人はきっと誰もがその緑に苔むした意外な富士山の一面に心を奪われ、険しい標高差や長い道のりはあっという間に意識の外へ追いやられることでしょう。

12時間以上を歩き続け森林限界を超える頃、ふと振り返ると、そこには広大な雲海の向こうに沈もうとする太陽が、その日の難行を讃えてくれているかの如く柔らかな眩しさを以て我々を染め照らしてくれます。

続く3日目。この日はいよいよ山頂へ登拝するのですが、10月前半の富士山は例年既に初冠雪を過ぎていることも多く、天候を何度も伺いながら出発の時間を調整します。コンディションが良ければ昨日と同じく4時~5時に宝永山荘を出発し8合目前後で御来光に見えます。

太ももには今日までの疲れが抜けきっておらず、全員で「懺悔懺悔、六根清浄!」の山念仏を掛け合いながら、気持ちを奮い立たせて掻きつくように少しずつ登っていきます。そして遂に3776m、日本で一番高い場所に辿り着くと休む間もなく、不動明王の像の前で回向勤行が始まります。この大和修験會の修行を支えて下さっている信奉者の方々から託された多くの故人様への想い、その想いを一心に読経に変えて、日本で最も高いこの場所から天に届けます。

冨嶽両界峯入りと銘打たれたこの修行は、ここまでが生の世界。そしてここからが死の世界へと、己の内面の中で生死不二の感慨を高めながら、下りは階段の多い吉田ルートで標高2300mの星観荘を目指します。登ってしまえば後は下るだけ・・・、と簡単に思いきや、これがなかなか辛い道のり。登拝の喜びで忘れていた足腰の疲労は、体のブレーキを甘くしてしまい、気を抜くと転びそうになるほどの覚束ない足取りで、荒涼としたガレ場を黙々と下ります。

そして最終日4日目、既に紅葉の始まっている美しい里見平から樹海を抜けて結願の場所精進湖を目指します。世間では樹海と言えば何だか暗いイメージがつきまとっていますが、村山古道から歩いて富士山の登拝を終えた身体で体感する樹海の空気は、天気がどうであろうと晴れやかな心境に新鮮に溶け込んで、ここでも富士山の意外な一面を体験することになるでしょう。

昨日までのガレ場が嘘のように道はとても優しく、昨日までアスファルト→山道→ガレ場と酷使されてきた足裏をいたわるかのような腐葉土のクッションが20km近く続きます。また、精進湖に至る直前には、ここではお伝えできない神秘の体験も盛り込まれていて、最後まで気の抜けない充実した修行が続きます。

以上、ご紹介しましたように、ただ富士山に登るだけでは決してない、様々な場面、様々な風景、様々な感慨、様々な喜怒哀楽がそこにはあります。特筆すべきは、気候の不安定な富士山頂部になんと第一回目から今回までの通算8回、全て登拝を果たしているのです!

この修行でしか味わうことのできない貴重な体験を通し、参加者それぞれが『人生をいかに生きるのか?』という問いをさらに深めていただくことが先達一同の願いです。厳しいだけでも楽しいだけでもない、いや苦楽とは本来相対しているものではなく、また此方から選び取るものでもなく、ただただ直向きな本気さの中だけで味わうことのできるものではないでしょうか。

大和修験會では、その『本気』を感じていただける瞬間が大いにあると自負しております。
そして我々はその『本気』を共有して下さる方を世界中から募集しています!

是非、御一緒に冨嶽両界を歩きましょう!

(参加を希望される方や、詳しい情報は大和修験會のFaceBookページ、もしくは龍禅院のホームページをご参照下さい。)