熊本大学 二年 宮元 美桂理 様
私は今回、初めて冨嶽両界峯入修行に参加させていただきました。大学生で必ず行くと決めていたのでこの日をとても心待ちにしていました。令和三年度、第十一回冨嶽両界峯入修行には、宮崎県都城市の太郎坊山龍禪院 大和修験會 宮元隆誠代表をはじめ十九名の方々が全国から集まり、初参加の方もいる中、修行者一丸となり十月一日から四日間に渡る修行となりました。ここで、私の人生観は大きく変わりました。
初日は朝四時に起き、富士市の鈴川海岸で水垢離をし、心身を清めて富士山修行が幕を開けました。富士塚での勤行、そして吉原商店街にて数十軒にも及ぶ御祈祷、日吉浅間神社でも参詣をした後ひたすら歩き続けました。初日の宿までは坂道が多く、途中途中で水分補給が必須となりましたがここで飲む水や飴玉はいつも以上に美味しく感じられ、普段何気なく食べ飲みできている自分の毎日が贅沢であることを実感しました。初日にして十四時間歩き続けましたが、足袋で歩くことは初体験。修行をあまくみていた私にとって、想像の数十倍もきついものでした。辿り着いた興法寺大日堂では全国から寄せられた特別祈願や特別回向供養を執り行い、一日目は修了しました。これまでは、きついと感じると何でもすぐに諦めてしまいがちでしたが、今回は修行であり、途中でやめてしまえば終わりだという気持ちが強かった為、最後まで粘りました。
二日目も朝四時に起き、村山古道から富士山五合目を目指してひたすら歩きました。この日も初日に引き続き、数ある場所に碑伝を立てては勤行をしました。この峯入修行は今年で十一年目ということで、これまで立てられてきた碑伝もまだ残されていました。長い間、雨風に打たれているにもかかわらず、飛ばされることなくこの日を待ち侘びていたかのように残っていたのでこの修行がどんなに力を持っているのかに気付かされました。
三日目は朝二時に起き、五合目からのスタートです。富士山から見るご来光はこれまで見た事のない美しさで、まるで私たちの修行を応援してくれているかのようでした。ご来光に向けてする勤行はとても気持ちの良いものでした。八時間ほどかけてようやく山頂につきました。日本一高い山に、普通の登山ではなく海抜ゼロメートルから登り切ったという事実に感動し、これまでの苦しい思いを振り返ると、今までの自分の考え事が全て些細なことのように感じました。下山中には不運にも膝を痛めてしまい、周りの方々に沢山のご迷惑をおかけしてしまいました。私は正直、この修行がこんなに苦しく、大変なものだとは思っていなかったのでこの日のための訓練などほとんどしていませんでした。ここでも自分の甘さを身に沁みて感じました。
最終日の四日目も朝二時に起き、ゴールである精進湖を目指して歩きました。青木ヶ原樹海を通るのに少し怯えている自分がいましたが、そこには富士山で疲れ切った身体を癒すほどの神秘的な空間が広がっていました。絶対にまたここに戻って来なければいけないと強く感じるものがありました。終盤に近づくにつれ、足が思うように動かなくなり何度も挫けそうになりましたが、やっとのことで無事満行することができました。
この修行を終え、自分は確実に精神面が強くなったと言えます。苦しかったとは言え、また来年も再来年も参加します。次回は、きちんと修行に備えて身体を鍛え、周りの方をサポートできるように精進したいと思います。また、修行をする身として、勤行を完全に覚えてから挑みます。
四日間聞き続けた法螺貝、お経がまだ私の身体に染みつき、余韻を感じながらの大学生活が続いております。貴重な体験を有り難うございました。