白み始めた空、目の前には一面に広がる雲海。
その彼方、蒼い雲を押し分けて太陽が昇ってきます。
會長に連れられ、ようやくたどり着きました。
ここは、7合目の辺りでしょうか。
キラキラと広がる光の輪が、山と私たちを、やわらかく包んでくれます。
蒼からオレンジへ変色する世界で、般若心経を唱えました。
朝日に向かい、一心不乱に!
こんな蒼を、私は知りません。
こんなオレンジの光を、見たことがありません。
気が付くと、私は泣いていました。
富士山が世界遺産になって3年、ずっと登りたいと思ってきました。
機会なく時が過ぎて今春、ある方から宮元會長をご紹介いただきました。
でも、修行場として日本一の富士山、私のような一般人が参加出来るのか?
性別の問題は?
体力は持つのか?
電話で事情を伺ったところ、會長ご自身が気さくに対応してくださいました。
大変ありがたく、ならば行ってみようと決意した次第。
麓(田子の浦)から登り始めて3日目、地下足袋はもうボロボロです。
初日に、先ず降り止まぬシトシト雨が歓迎してくれました。
次いで2日目の岩谷不動尊、私の法螺貝が、吹こうとした途端に破損。
富士という霊界に足を踏み入れた証しだったのでしょうか・・・
「身代わりになってくれましたね」とは、會長のお言葉。
さて、ご来光を仰いだ後の話です。
山での修行に多少なり自信のあった私ですが、打ち砕かれました。
空気の薄さのせいか、8合目あたりで息が上がり、前へ進めませんでした。
無論、山念仏も唱えられません。
頂上への到着は、最後尾になってしまいました。
精進湖を目指した最終日、私の足裏は皮がむけ水ぶくれ状態でした。
痛みがしみる一歩一歩でしたが、テーピングを施してもらい、少しは楽に。
意外だったのは、樹海の土です。
とても優しく、私の身体と心を癒してくれました。
ただ、木漏れ日のスポットライトを浴びるはずの鳥の姿が見えません。
樹海は、やはり魔境?
私以外の人たちの耳に、彼らの鳴き声ぐらいは聞こえていたのでしょうか。
やがてたどり着いたゴール、精進瑚は美しい銀色に輝いていました。
湖面を想いだし般若心経を唱えると、胸がいっぱいになります。
足が止まって心配をかけたことや、テーピングや手荷物のサポート等々。
皆様の優しさに、たくさん甘えてしまいました。
一方で、叱咤激励や課題も多く賜りました。
そのすべてが、会社勤めの私には経験出来ないことばかり。
かけがえのない時間を、ありがとうございました。
精進し、来年も参加したいと存じます。

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